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教員・学生の声 三原 久和

三原 久和(大学院生命理工学研究科 生物プロセス専攻)教授

 

Q ACLSのプログラム責任者になった経緯と、ACLSの学びの社会における重要性を教えてください。

ACLSの教育カリキュラムは国際的科学技術ニーズに対応するプログラムです

三原:2015年4月から、生命理工学研究科の研究科長を前任の関根光雄先生から引き継いだのと同時に、関根先生が兼務していたACLSのプログラム責任者となりました。それまではACLSの発足時からキャリアパス形成・派遣部会のメンバーとして、企画や審査を行う立場で関わってきました。プログラムの運営は秋山教育院長が統括されているので、プログラム責任者は、全体を見渡して各部会やWGが機能しているか、問題点はないか、より発展させるにはどのように対応すべきかなどの意見を述べています。

 ACLSではΓ(ガンマ)型人材といって、生命理工の学生は生命科学や生命工学を柱にして情報科学の基盤知識を習得し、情報科学の学生は生命科学・生命工学をサブで学びます。専門分野の深い知識に加えて副分野の基盤知識を備え、分野横断的な問題の解決能力を武器に、これからの社会で活躍できる人材を育てます。たとえば創薬の世界では、ACLSの設立以前からコンピュータでの創薬シミュレーションが実施されていましたが、IT創薬として今後ますます発展していきます。生命科学・生命工学を学び、情報科学の知識を加えることにより、このような研究の世界において大いに活躍してもらえると思います。

 今後、創薬の世界はもちろん、生命科学・生命工学の分野ではゲノムとポストゲノムの社会になります。 タンパク質研究でもこれまでのように単に立体構造を計算するだけでなく、大量のゲノム関係の情報と組み合わせて取り扱わなくてはならないので、ますますコンピュータの力が必要になってきます。世界的にこの傾向は同じで、産業を興すにしても、情報科学はなくてはならないものになってきています。また、国が主導する「第5期科学技術基本計画(注)」では、IoT (モノのインターネット)が一つの柱になっていて、ACLSではこのような社会において科学技術的貢献力を備えた学生を育てられると思っています。

注:第5期科学技術基本計画
1995年に制定された科学技術基本法に基づき、国は1996年より長期的な視野に立って、体系的かつ一貫した科学技術政策を実行している。第5期は2016年度から2020年度の5年間。

 

Q こうした科学技術を取り巻く社会の傾向に、ACLSのカリキュラムは具体的にどういった形で対応しているのですか?

グローバルに活躍する国際的人材の養成を目指し、理工人としての人間力やリーダーシップを備えた人材を輩出します

三原:ACLSの学生で自分の研究分野をおろそかにしている人はいません。専門性が落ちることは決してなく、プラスアルファでACLSのトレーニングを受けていることになります。ACLSに所属していない学生は、主に自分の研究室での研究を通じて専門力を備えるのに対し、ACLSでは自分の専門以外の演習や講義を修得します。また、修士課程であれば国内企業に短期インターンシップに行き、博士課程であれば海外インターンシップに参画するので、研究だけではない多くの社会的経験を積むことができます。

 国際性はACLSの強いキーワードです。博士課程の海外インターンシップは、3か月以上行うことが必須となっています。インターンシップ先では、各学生がこれまで行ってきた研究を基軸にして、より発展的なことや、方向性を変えた研究を行います。海外の大学には起業に関連するセミナーも多くあり、スイスなどでは産学連携環境が充実していて、たとえばローザンヌにあるスイス連邦工科大学EPFLでは学生が企業人と普通に食事をしながら、産学連携に関するいろいろ話ができる機会などがあるようです。インターンシップ先の研究室にはいろいろな国の人が来ているので、異なる文化や思考をもつ研究者と相互に考える力やそういう研究者と討論する力がつき、学生にとってインプレッシブなことがたくさんあります。彼らにとってこのような新規の研究環境や経験が刺激的であり、3か月だった滞在予定を1年に延ばす学生もいるほどです。東工大にも海外からの留学生がいるので、日本にいても国際感覚を養うことは可能ですが、彼らの方が日本人の考え方や文化に合わせてくれている部分があります。学生自身が自ら海外に出て体験すれば、理工人としての国際力やリーダーシップも自然に養うことができます。

 また、ACLSでは産学官連携によるキャリアパス教育にも力を入れています。たとえば「ベンチャー起業特論」などでは、起業経験者を講師として迎え、アントレプレナーシップ育成にも取り組んでいます。ACLSで学ぶ学生は大変だと思いますが、外の社会を見る力が備えられ、かなり鍛えられているのではないでしょうか。本人たちもそれらをこなすことで、自身の能力が伸びていると感じているはずです。

 

Q 学生と接してみて、ACLSの教育の効果を感じることはありますか?学生たちはどのように成長しているのでしょうか。

学生たちは海外から帰ってくると雰囲気が変わります。帰国後に「最先端の成果を出したい」と意欲が上がる学生もいます

三原:私の研究室にいる学生を見ても、もともと非常に能力が高くても、海外インターンシップから帰国すると、「もっと上を目指そう」、「最先端の成果を出そう」と、意欲がものすごく上がっているのがわかります。また、海外に出ることで相手に対する説明力や討論する力などをより高レベルに身につけ、理工人としての人間力やリーダーシップを備えていっていることが見受けられます。かつては博士課程を終えてからポスドクとして海外の研究室に行ったものですが、今は両方の経験を一緒にできるような素晴らしいプログラムであり、我々としては羨ましい限りですね。

 また、毎年海外の講師や提携校の学生を招いて行う「国際夏の学校」では、学生が主体となって約1週間の開催期間の内容を決め、現地での実行も行います。毎年ACLSの学生の約3分の1が参加し、開催当初は海外の学生のアグレッシブさに圧倒されてなかなか話せないこともありました。4年目となった今では、先輩たちの経験を活かしながら積極的に前に出て、彼らと対等にディスカッションしています。個々の学生たちのリーダーシップはかなり上ってきています。

 

 

Q 2016年4月からの教育改革について教えてください。ACLSの授業はどのように変わり、どのようなメリットがあるのでしょうか。

学内に留学生が増え、よりインターナショナルな雰囲気になると期待されます

三原:ACLSのプログラムの内容自体に変更はありません。ただ、授業が2学期制から4学期制になるので、今までは週1回、約4か月で単位を取っていたものが、週に2回同じ授業があり、2か月でその単位がとれるようになります。今まで週1回だったレポートが週2回になったり、短期間でかなり密度の高い授業を受けることになるので、学生にとっては少し大変になるかもしれません。4学期制のメリットとしては、たとえば1学期で単位をとれたら、2学期は授業をとらなくてもいいことになります。夏休みの2か月だけでなく、6月~9月の約4か月間を活用して海外に行ったり、企業にインターンシップに行くことが実行しやすくなります。

 また、国ごとに異なる学事歴に対応できるようになります。海外からの短期留学生を受け入れやすくなり、ますます学内がインターナショナルな雰囲気になるでしょう。こうした中、海外経験をもったACLSの学生などが留学生の世話をしながら、お互いに高め合う機会も増えてくると思います。

 

 

Q 最後に、ACLSに興味をもっている学生に一言お願いします。

ACLSのプログラムを利用して自分のポテンシャルを高め、国際人として活躍してほしいです

三原:単に授業がキツそうだからやめておこうという学生もいます。また、単に奨学金などの支援が魅力だから参加しようということではなく、今までお話してきたように学生間で競い合いながら自分のポテンシャルを高めるために、このプログラムは最適です。結果として社会的に要求されている人間力が高まり、国際力が育つので、多いに利用してほしいです。社会に出ると国際的感覚を身に付け、いろいろな人と議論しながら物事を進めなくてはなりません。そのような力がこのプログラムで身に付くようになっています。修士・博士一貫コースに入りたいということであればぜひ参加してほしいのですが、なかなか修士1年生のときに博士まで進もうと決めきれない人は、課程参加をして半年後に博士進学を決めることも可能です。

 また、これは当初教員側では予測していなかったことなのですが、今まで研究室に閉じこもって自分の研究に没頭していた学生たちに横のつながりができ、協力関係が築けるようになってきています。お互いに切磋琢磨していく関係ができますから、参加する学生にはすごく大きなメリットがあります。

 今後、日本社会でも博士号をもつ研究者がさらに必要になるでしょう。博士課程でしっかり研究を行えば、就職でも博士の方が有利ですし、ACLSで高い能力を修得すればさらに有利です。また、会社の中でも期待されるポジションにつきやすいので、ぜひACLSに参加して博士号を獲得し、いろいろな社会において国際人として大いに活躍してほしいと思います。

※掲載内容は2015年12月のインタビュー時点のものです。

 

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