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教員・学生の声 野原 健太、柴田 紘孝

野原 健太(生物プロセス)、柴田 紘孝(生命情報)

 

Q 二人ともプログラムが開始した平成24年度よりACLSに参加されていますね。ACLSに参加しようと思ったきっかけは何ですか?前例がない中、不安はありませんでしたか?

最初は不安もありましたが、専門分野以外のことを学ぶことで視野を広く持つことができ、自分の将来の可能性を広げられると思いました

柴田:ACLSが始まると聞いたのは、修士1年の博士後期課程に進学するか悩んでいた頃です。このプログラムの柱でもある生命科学、情報科学の両方を学べることに興味を持ったことはもちろんですが、海外インターンシップや海外の学会に参加できるといった経験ができ、サポート体制も充実していて、自分の将来の選択肢を広げられると思い参加を決めました。私は国内で研究していますが、研究内容はグローバルなものです。海外で研究を行ったり、そこにいる学生たちとコミュニケーションがとれることは魅力でした。

野原:私はもともと博士後期課程に進学しようと思っていました。一方で、博士後期課程に進学すると「どんどん視野が狭くなってしまうのでは」という不安もありました。そのため、自分の専門である生命科学以外の分野を学べるACLSは魅力的でした。実は、情報科学でなくても、自分の専門以外であればどんなテーマでもよかったです。ACLSでは、それに加え自分のフィールドを飛び越えて海外に行く機会があり、大変興味をもちました。

柴田:最初は研究の時間が減ってしまうのでは、という不安はありましたね。けれど実際に参加してみると、研究の時間が減ることは確かなのですが、研究では得られない種類の経験を積むことができました。たとえば、夏の学校では海外の学生と実際に交流してグループワークを行います。自分の研究を分野の違う人にどう伝えたらよいか、わかりやすく伝える能力も磨かれたと思いますし、自分の研究に対して、今までとは違う視点を持つこともできました。

野原:確かにたくさんの授業を取らないといけないので、自分の実験の時間が減ることに最初は心配はありました。しかし、実際に授業が始まると、上手く時間をやりくりすれば必ずしもできない量ではないとわかりました。実験→ACLSの授業→実験→ACLSの授業、とよいリズムを作るきっかけになったと思いますし、両方に集中して取り組むことができました。時間管理能力も鍛えられたと思います。しかも、別のことをしている最中に、自分の研究に関係するアイデアが生まれることもあり、結果的によかったです。

 

 

Q 二人はどのような研究をしているのですか?ACLSに参加することで研究にどのようなプラスがありましたか?

異分野の知識を増やすことで、結果的に自分の研究に関するスキルが上がりました

柴田:真核生物の遺伝子発現の制御について研究しています。細胞の機能、役割は遺伝情報が決定付けています。その遺伝情報がどんなルールに従って細胞の機能を決定したり、その中で起こっている生命現象をコントロールしているかを研究しています。ES細胞やiPS細胞といった幹細胞が特別に持っている遺伝子の制御のしくみに着目して、今までにない新しい遺伝子の機能や再生医療の発展に繋がる発見ができればと思って研究してきました。
遺伝子研究では大量のデータを利用することが主流になっているので、解析にも情報科学の知識が必要です。以前はとりあえず解析結果が出れば満足していたのですが、ACLSで情報科学の基礎を学ぶことができたので、より基礎のしっかりした解析技術を手に入れることができたと思います。間違いなくスキルが上がりました。

野原:水素を発生する微生物について研究しています。水素は石油、石炭など化石燃料に代わる次世代のクリーンエネルギーと言われていますが、その微生物がどうやって水素を発生しているのか、また、その微生物の遺伝子を改変することで、水素発生量を増やすことができないか研究しています。
ACLSへの参加前から実験データの解析に情報技術を使っていましたが、今思うと実体を把握していなかったですね。パソコンのEnterキーを押せば結果は出ますが、プロセスをよく知らずに初期設定のままで利用していました。ACLSの授業によっておおよその設定値が何を意味しているか理解できたので、使いこなすスキルが上がりました。

 

 

Q ACLSではさまざまな授業やイベントがあります。何が一番印象に残っていますか?また、4年間でどのようなことを習得できたと思いますか?

海外インターンシップや英語の授業。「ACLSに参加したからこそ」という収穫がありました

柴田:海外インターンシップです。私はスイス連邦工科大学の研究室に3か月滞在しました。日本人は一人もおらず、学生も半分以上はスイス以外の国からの留学生が占めるグローバルな環境でした。最先端の環境にはどんな人たちがいて、どんなスタイルで研究をしているのかを肌で感じることができました。

野原:私は海外インターンシップも印象的でしたが、英語の授業がためになったと思っています。5人ぐらいの少人数で、ベルリッツの先生による英語の授業を受けました。私のクラスは中の下ぐらいで、皆たどたどしい感じで話すのですが、同じレベルの人たちと話すと慣れてくるんですね。もし、最初からハイレベルの人がいたら、話しにくかったと思います。ある程度レベルが上がると今度は英語を話すだけでなく、英語で討論するんです。かなり頭を使いましたが、英語を話すスキルの地は固まったなと思いました。

柴田:ACLSに参加することで、自分が経験してみたいことをサポートしてもらえ、一人ではできそうになかったことが実現したと思います。たとえば企業へのインターンシップのようなことでも、前向きにチャレンジしてみることができました。ACLSに参加しなければ、他の専門の人たちに自分たちの研究を伝える機会もなかったと思いますし、様々な経験を経てメンタリティも鍛えられたと思います。

野原:自分ができること、できないこと、相手の専攻分野のできること、できないことがクリアになりました。相手のできないことは自分の専攻分野で補うことはできないか考える力もついたと思います。また、ACLSのイベントに参加することで、国内だけでなく、海外でも能力の高い人に会う機会が増え、「自分は大丈夫かな」と挫折しかけたこともありました。でも、そこで「負けていてはダメだ」と奮起できたので、ステップアップできたと思います。

 

 

Q ACLSに参加することは将来の進路決定に役立ちましたか?二人とも就職が決まっていますが、面接などでどのような点がアピールになりましたか?

ACLSに参加して将来の夢が決まりました。博士課程の学生に向けられる周囲の思い込みを払拭することに努めました

柴田:卒業後は、コンサルタントの仕事をします。この仕事に興味を持ったのは、ACLSで頻繁に開催されていた、卒業生や企業関係者をお招きした講演会や座談会に参加したからです。現場で働く方の生の声を聞き、自分のスキルがどういった形で社会にいかせるかを具体的にイメージすることができました。複数の学生でお話を聞くこともメリットで、他の人はその職業をどう捉えているかを見ることで、自分の立ち位置や、これは自分に向いていそう、向いていなさそう、とより具体的に判断できました。

野原:私は社会に出てからも自ら研究してバリバリ活躍してやるぞ、という心意気はあったのですが、ACLSに参加すると能力が高い人がいっぱいいるな、と実感しました。自分が研究をしなくても、他の人の研究をサポートする形で研究と関わる仕事の方が実は向いているんじゃないかと思いました。実験機器のメーカーに就職予定ですが、この仕事に絞れたのもACLSでの経験があったからこそです。

柴田:自分のもつ論理性や理系的なスキルは問題ないと思ったので、面接では会社に適応できる人間だということをアピールしました。大学に長く残っていることもあり、企業の方はそうした部分を見ているように感じました。ACLSでいろいろな経験を積んだことを話し、自分は社会でも活躍できるという自信とその根拠を伝えることを意識しました。最初は不安もありましたが、自分の強みと弱みを知ることで不安は解決できました。

野原:私は「竹」みたいな人間です、と面接で話しました。人の意見を受け入れ、かつ自分のしっかりした芯を持っています、という意味です。博士課程の学生は視野が狭く、人の言う事も聞かなくて自分勝手だと思われがちです。第一印象からそのような先入観を払拭したい、というのがありました。その裏づけとして、実際にACLSでゼロから情報科学を学び、いろいろな人にいろいろなことを教えてもらいながら、海外で自分の研究を進めることができるぐらいスキルを確固たるものとしたことをエピソードを交えて話しました。

 

 

Q 最後にACLSに興味を持っている学生に一言お願いします。

ACLSに参加すれば必ず自分を高められます

柴田:ACLSのよいところは自分次第でいろいろな関わり方ができるところです。研究に集中したいのであれば、夏の学校や授業を取るだけでもよい、いろいろ経験したいのであれば満足できるぐらい多くの経験ができる場所だと思っています。イベントに参加することで、自分を客観的に見ることもできます。参加を迷うなら、大変かもしれないけれど尻込みしないで、ぜひ参加してほしいですね。一人ではできない経験をすることができると思います。

野原:とにかく大変なことも多いですが、それを加味しても海外留学できたり、企業の人に会えたり、よい経験ができるのは確かです。授業を改めて思い出すと、自分のレベルに合わせて少しずつステップアップできたのは、他ではできない経験だったと実感しています。成長したいならぜひ参加してほしいですね。

※掲載内容は2015年12月のインタビュー時点のものです。

 

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