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教員・学生の声 印出 健志、長谷川 智也

印出 健志(分子生命科学)、長谷川 智也(生命情報)

 

Q まず最初にACLSのプログラムに参加しようと思った動機についてお聞かせください。また、二人はどのような研究をしているのですか?

グローバルな人材になるために必要なプログラムがあると思ったからです。生命科学の領域で研究しています

長谷川:もともと大学教授を目指していたこともあり、博士課程に進む意思をもっていました。具体的に進学を考えるにあたり、専門性を高めるだけではなく、一つの分野に縛られない人材、かつ日本以外でも活躍できるグローバルな人材になりたい、と思うようになりましたので、ACLSは自分の目標と合っていると思い参加しました。
グローバルな人材になるためには英語の能力は欠かせません。ベルリッツの講師陣による英語の授業で学んだことを、夏の学校での海外学生とのグループワークやディスカッションで実践し、鍛えられることは魅力でした。

印出:ACLSの話を聞くまでは博士課程に行くかどうかも決めていませんでした。また、将来的に研究者として働きたいという以外に明確な目標もありませんでした。夏の学校など、研究室に引きこもっていたら体験できないような外部の人と交流できるプログラムがあると知り、興味を持ったのがACLSに参加を決めた理由です。経済的な支援も魅力でした。

長谷川:組織の再生について研究しています。たとえば、魚はヒレが切れても元に戻るのですが、そうした生物を研究し、どうすれば組織を再生できるのかを解明することで、それをヒトの組織の再生に利用できるようにしたいという目標を持って研究しています。

印出:核酸をケミカルな視点で研究しています。天然に存在する核酸をそのまま用いるだけでは薬として十分な効能を発揮しません。医薬品として応用するために、核酸に化学的な修飾を施して、医薬として使える実効的なものを作ることを目指しています。

 

 

Q  ACLSに参加することで、どのような点が研究のプラスになりましたか?また、何が大変で、それをどうやって乗り越えたのですか?

研究に対する考えや姿勢が変わりました。壁にぶつかっても必ず解決方法は見つかります

長谷川:遺伝子の発現を調べることがあったのですが、膨大な量のデータを扱うので、情報科学的なアプローチが使えると思いました。今の段階で自分が活用できているわけではないのですが、今後の研究生活に繋がってくると思います。
また、海外に行く機会が増え、海外の研究室のよい所や見習いたい部分を知ることができました。

印出:自分の研究分野は、周りにいるさまざまな専門家とコミュニケーションを取る必要があります。たとえば、核酸という分子は生体内の情報の伝達と保存のための物質で、かつ生体物質の構造体でもあるので、膨大な量のデータを扱うバイオインフォマティストや構造計算の専門家、さらにはバイオロジストなどが関わっています。そういう方々とコミュニケーションをとるためには、最低限お互いの領域の知識がないといけません。たとえば向こうが何を知っていて、何を知らないか、相手のバックグラウンドを考えながら話さないといけない。ACLSではそういった経験を積むことができました。

長谷川:参加前の想像よりも取らなくてはいけない授業の数は少なく、研究に割く時間を考えてくれている印象を受けました。プログラミングなどの知識が全くないものは不安でしたが、始まってしまえば慣れてくるし、いろいろな人に助けられながら進めることができました。私の場合、先輩も含め4人同時に研究室からACLSに入ったので、そもそも知り合いが多く不安はあまりありませんでした。授業が進むにつれて情報科学専門の人とコミュニケーションをとるようになり、お互いに分からないところを教え合い、解決していきました。

印出:知識が全くないプログラミング言語の授業は大変でした。研究室の中には聞ける人がいないというのは不安でしたね。周りの人は皆知識がある人で、授業についていけない状況になりかけ、かなり焦りました。自分で本を読んだりもしましたが、それでも対応できず、結局授業を開催している先生の研究室を訪ね、助教の方に直接教えてもらいました。

 

 

Q 二人とも「夏の学校」に3年連続で参加しています。経験したことと、身についたことを教えてください。

ポスター委員やグループワーク委員として、自分たちの手で夏の学校をつくり上げ、貴重な体験となりました

印出:2013年の夏の学校 (英国ロンドン市 インペリアル・カレッジ・ロンドン) では、グループワーク委員として、参加しました。週1回、1時間ぐらい集まって、ガンガンアイデアを出し合い、どんなグループワークをするのか、どういう方向性にするかというところから議論しました。最終的には、10年、20年後に実現しているであろう技術について議論するという課題に決まり、夏の学校終了後に『Future』という一つの冊子を作るところまで担当しました。現地で自分のグループワークを行いながら、委員として全てのグループに期限を周知して守ってもらうことは大変でしたが、『Future』が完成したときは苦労が報われたようで嬉しかったです。

長谷川:私は2014年の夏の学校 (米国インディアナ州 パデュー大学) でポスター委員として参加しました。ポスターを使って研究を発表するのですが、最初に参加者から送ってもらうアブストラクトを見て、慣れていない分野を正確に仕分けするのが大変でした。いろいろな分野の人が参加するので、同じ分野の人のポスター発表を聞きに行くのではあまり意味がないと思い、たとえば発表の時間差を設けたりして、異分野の人の発表を聞きに行けるしくみを作っていきました。

印出:研究を行うには、どこの国の人とも英語でコミュニケーションをとることが求められます。 夏の学校で経験したことはかなりいいトレーニングになりました。

長谷川:海外の学生とグループワークができる機会はほとんどないので楽しいものでした。夏の学校では講義もありましたが、学生同士の交流が特に楽しかったです。
面識のない相手と一緒に、数日後には課題発表をしなくてはいけないので、コミュニケーションをとるのは貴重な経験でした。2012年の夏の学校(湘南国際村センター)では、日本人同士が日本語で話すこともあったのですが、参加回数を重ねるたびに慣れてきて、だんだんとそれがなくなってきました。
また、2013年に一緒にグループワークを行った人が2014年の夏の学校にも来ていて、「去年も会ったね」ということになったり。ちゃんと繋がりができていて、それは面白いですね。

 

 

Q 海外インターンシップ先はどのように決めるのですか?また、そこで何を学びましたか?

指導教員の紹介でインターンシップ先を決めました。研究に対する姿勢の違いを学べましたが、日本の研究室のよさも再認識しました。(印出)分野が近い研究室に論文を送って、受け入れてもらいました。(長谷川)

印出:私は当時の指導教員である関根光雄先生の紹介で、コロラド大学ボルダー校に行きました。インターンシップ先の先生から、新しいテーマを考えているので、半年~1年は来てほしいとのことで、9か月という長い期間滞在しました。

長谷川:私は先生の紹介はなく、一から探さないといけませんでした。幸い論文を書いたばかりでしたので、分野が近いニュージーランドのオークランド大学の研究室にメールで論文を送ったら、4日後ぐらいに返事が来ました。

印出:自分のいた研究室は学生が誰もおらず、先生とポスドク6人だけで動いているところでした。先生以外は全員インドや中国、イタリア、ポーランドなどアメリカ以外の出身でしたが、研究をしていて、お互いのスタイルやゴールに向かうやり方についての壁は全く感じなかったです。国籍に違いはあっても研究の仕方は変わらないのだなと思いました。
ただ、研究室のポスドクは結婚して家庭を持っている人がほとんど。また、外から出入りしている学生にも子供がいたり、カルチャーショックを受けました。朝早く研究室に来て、決められた時間に実験を終え、夕方には帰宅するといった姿勢は勉強になりました。
逆に、日本の研究室は実験スペースや機器の使用などお互い気を使い、やりやすい環境を保っていていいなと思いました。

長谷川:私も時間の使い方が想像と違いました。朝8時から夕方6時までが研究できる時間と決まっていたので、短い時間で実験の準備を整えるのが大変でした。段取りは家で考える、研究室にいる時間を有効的に使う。この感覚が一番学んだことです。効率的に時間を使うことで、プライベートの時間がとれたり、普段と違う分野の論文を読む時間ができました。
また、日本なら研究室単位で実験を完結させることが多いのですが、私がいたオークランド大学では1フロアに5つぐらいの研究室がありました。流動的になっていて、知識や試薬をシェアするなど横のつながりを生かすのが上手だと思いました。向こうでは食事の時間も研究やアカデミックなことについて話をしていて、そういうところから良いアイデアが生まれたこともありました。それはこれからも取り入れたいと思っています。

 

 

Q 二人の将来について教えてください。また、これからACLSに参加しようと考えている人たちに一言お願いします。

ACLSのプログラムには、ただ研究するだけでは得られないチャンスがあります

長谷川:研究する中で一番楽しかったのが、実際に自分の手を動かす実験ではなく、実験結果などを予測したり考えることでした。そのため、アカデミア以外の道も就職先の選択肢として考えました。研究室にはコンサルティングの会社に就職した先輩がいて、自分も最初はその職を目指しました。しかし、コンサルティングと研究の間にあるのが、事業をしながらアドバイザー的な立場にもなる商社かと思い、業界を絞って就職活動を行い、内定をいただきました。面接では海外経験をよく聞かれました。夏の学校やインターンシップの話は評価されたと思います。

印出:研究は知れば知るほど深い世界があり、そこに面白さがあり、終わりのない世界なので、やっていて飽きないです。今研究している核酸は多方面で活用できる魅力をもった物質なので、もう少し関わっていきたいです。私はまだ就職先は決定していませんが、大学4年生で研究室に入って最初に味わった「今までに存在しなかったものを作って、世に送り出すことの楽しさ」を味わえれば、アカデミアでも、企業でも進路に特にこだわりはありません。就職してからの研究分野が今の研究内容とどう繋がるかというのは難しいですが、最初に覚えた「研究の楽しさ」は味わっていきたいです。

長谷川:ACLSのデメリットを考えたのですが、思いつきません。授業は自分のためになるようにカリキュラムが用意されていて、参加しない理由がないと思いました。 ACLSに興味を持つ人がどんな博士生活を送りたいかは人それぞれだと思いますが、全ての人に対応したプログラムだと思うので、迷わず参加してみたらいいと思います。研究室以外の同期、後輩、先輩と友人が増えるのもいいですね。
違う人の研究について知ることも楽しいです。論文から入ったらハードルが高くて理解できないようなことも、ACLSの友人たちが噛み砕いて教えてくれます。ポスター発表で異分野の人に自分の研究を見てもらった時に「それって何がすごいの?」と尋ねられることもいい経験でした。私たちは、研究のために資金的にもサポートしてもらっているのだから、異分野の人はもちろん、何の基礎知識を持たない世間一般の人にも意義を理解してもらえる研究をしなくてはいけないと思うのです。ACLSはそういった説明する力を身につける機会を与えてくれる、ためになるプログラムでした。

印出:最初は時間を取られるので実験に支障が出るのではないかと思ったこともあります。でも、自分で時間を調整すればやりくりできるとわかりました。これからの参加を考える学生は自分たちのように長く資金的なサポートは受けられないかもしれないけど、ACLSには今までにない授業やチャンスが転がっています。手を伸ばせば自分のものにしやすいところに用意されているので、掴みに来たらいいと思います。異分野を学ぶことは、「どうして、そんなこと勉強しないといけないんだ」と思いがちですが、それを打破できる経験をいただけたのはものすごく貴重でした。

※掲載内容は2015年12月のインタビュー時点のものです。

 

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